税効果会計がなぜ必要なのか

会計

会計の世界には法人税、住民税および事業税(以下「法人税等」)と税引前当期純利益(以下「税前利益」)を適切に対応させる税効果会計という調整手法があります。

なぜこのような調整が必要なのか、また調整した結果なにが改善されるのでしょうか。

損益計算書に税金の世界が紛れ込んでいる

損益計算書の構成は以下のとおりです。

売上高  ×××
売上原価  ×××
 売上総利益  ×××
販売費および一般管理費  ×××
 営業利益  ×××
営業外収益  ×××
営業外費用  ×××
 経常利益  ×××
特別利益  ×××
特別損失  ×××
 税前利益  ×××
法人税等  ×××
 税後利益  ×××

利益を計算するため、1カ所を除きすべて収益と費用で構成されます。

唯一異なる場所、それは法人税等です。
ここだけは益金と損金から計算されます。

では何が問題か?
それは収益≠益金、費用≠損金であり通常は利益≠所得とならないため、税前利益と法人税等の対応関係がなくなることです。
この結果、税後利益は税前利益から法人税等を控除した残額の意味しか持たなくなります。

例を挙げてみましょう。
ex.税前利益が1000、実効税率30%の場合
①利益=所得
税前利益 1000
法人税等   300(=1000×30%)
税後利益   700(=1000×70%)

②利益≠所得(交際費100が損金不算入)
税前利益 1000
法人税等   330(=(1000+100)×30%)
税後利益   670(≠1000×70%)

このように利益=所得であれば、税前利益、法人税等、税後利益の対応関係が明らかですが、利益≠所得の場合、対応関係が不明確になります。

収益≠益金、費用≠損金の理由は何か?

理由は2つあります。

・収益と益金、費用と損金の計上時期が異なる
・収益と費用にはなるが、益金と損金には永久にならない
1つ目は計上時期、つまりタイミングのズレです。
たとえば従業員への賞与支給のために賞与引当金を計上したとします。
会計上は費用計上されますが、税金計算は見積りを排除するため損金になりません。
損金になるのは実際に賞与が支給されたときです(=債務が確定したとき)。
賞与引当金計上がx1期で支給がx2期なら、費用はx1期、損金はx2期に計上されタイミングはズレますが、最終的に両者は一致します。
2つ目は収益と益金、費用と損金の範囲が国の政策上ズレている場合です。
たとえば交際費が該当します。
会計上は全額費用計上されますが、税金計算では損金にできる金額に制限があります。
その制限を超えた交際費は永久に損金にはならないため、たとえばx1期で損金にならなかった交際費がx2期以降で損金になることはありません。
つまり永久にズレは解消しません。

税前利益、法人税等、税後利益を対応させる税効果会計

適正な利益計算を目指す会計はどんどん見積りの要素を取り入れています。
一方、税金計算は見積りを排除して、それを認めず計算を行います。
したがって、法人税等は利益≠所得で計算され続け、税前利益や税後利益との対応関係はますます不明確になります。

また、会計は費用収益の対応関係を最も重視しています。
法人税等も利益を減少させる費用であるため、税前利益、法人税等、税後利益の対応関係を明確化しなければいけません。

これらの問題点を解消するための調整手法が税効果会計です。

税効果会計が着目するズレは?

利益≠所得となるのは、収益≠益金、費用≠損金となるためです。
またその理由は2つありました。
税効果会計が着目するのはタイミングの違いによるズレです。
計上タイミングがズレるだけなら、最終的に両者は一致します。
したがって、タイミングが早いまたは遅いという部分を調整すれば、税前利益と法人税等、税後利益を適切に対応させることができます。

他方で永久にズレが解消しないものは税効果会計の対象とはしません。

賞与引当金で例を見てみましょう。
x1期x2期の税前利益1000、実効税率30%、x1期に賞与引当金500計上、x2期に支給

①x1期
税前利益 1000
法人税等   450(=(1000+500)×30%)
調整額   △150(=△500×30%)
税後利益   700(=1000×70%)

②x2期
税前利益 1000
法人税等   150(=(1000-500)×30%)
調整額    150(=500×30%)
税後利益   700(=1000×70%)

①は賞与引当金が費用だが損金にならず、税金計算上は税前利益に加算されます。
一方、①で加算された賞与引当金は②で費用ではないが損金になり税前利益から減算されます。
つまり①では②で減額される法人税等150を先に支払ったので法人税等が増加し、②では①で先に支払った150が充当されて法人税等が減っているのです。
このタイミングのズレによる法人税等の先払いと充当を調整するのが税効果会計です。
①は法人税等の先払いで将来法人税等を減額する効果があるため資産が計上されます。その相手勘定は費用となり、資産/費用の仕訳が計上されます。

一方、②は先払いの充当なので①の取り崩しであり、費用/資産の仕訳が計上されます。

税効果会計を加味した税前利益、法人税等+調整額、税後利益は実効税率30%で適切に対応しており、費用収益の対応関係も明確化します。
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